タレントマネジメントで学習経歴を収集・活用するヒント

このところ、人事関連のトレンドワードとして「人的資本経営」や「人的資本情報開示」が上がっています。人的資本とは個人のもつ能力や才能、資格などを資本として扱うという考え方です。また、人的資本情報開示については、日本でも主に大手企業を対象に昨年から有価証券報告書に記載することが義務化されました。

従来の勘や経験に頼った人事管理からデータに基づき、自社の従業員の価値を内外に周知することが求められる中、育成指標を設け、PDCAサイクルの中で運用・管理する必要に迫られています。

今回は弊社タレントマネジメントシステム「あたりずむCampus」から従業員の学習経歴を管理する機能についてご紹介します。

従業員の学習経歴を収集する目的~タレントマネジメントシステムとの関係~

序章でも述べた通り、従業員など企業で働く「人」などを含めた無形資産の価値が企業価値に大きな影響を与え、企業への投資にあたって、その開示が求められています。

人的資本開示は、金融商品取引法第24条の「有価証券を発行している企業」のうち、主に大手企業約4,000社が対象です。2024年3月31日以降に終了する事業年度に係る有価証券報告書から適用されています。それに先立ち、2022年8月に内閣官房が策定した「人的資本可視化指針」では、人的資本の望ましい開示項目として7分野19項目が公開されています。

人材育成・リーダーシップ
・育成
・スキル/経験
エンゲージメント・エンゲージメント
流動性・採用
・維持
・サクセッション
ダイバーシティ・ダイバーシティ
・非差別
・育児休業
健康・安全・精神的健康
・身体的健康
・安全
労働慣行・労働慣行
・児童労働/強制労働
・賃金の公正性
・福利厚生
・組合との関係
コンプライアンス・倫理・コンプライアンス/倫理
出典:「人的資本可視化指針」内閣官房 非財務情報可視化研究会

開示項目の1番目にある「人材育成」では、研修時間や費用、研修参加率といった今まで企業内でも人事部門が経営層に提示していた指標も例に上がっていますが、リーダーシップの育成、研修と人材開発の効果やスキル向上プログラムの種類や対象など、どのような育成カリキュラムを持ち、その成果や効果を定量化、経年や組織で比較した結果の開示は従来の日本ではあまり見られない指標です。

主に大手4,000社を対象にしていますが、中小企業でも人的資本情報開示は求められており、今後、上場・非上場に限らず、人的資本情報は内外に公開することが広がっていくでしょう。

つまり、今までの人材データ管理では、この流れに対応できないということです。紙や電子データで従業員それぞれから人事部門の担当者に提出されたバラバラの情報をマンパワーで整理、分析することは時間面でも、情報鮮度の面でもかなり非効率です。

特に従業員が受講した様々な研修やe-ラーニング、資格取得、自己啓発の情報、スキルのレベルや自社(もしくは他社)での職務経歴といった従業員個人に紐づく情報を人事部門が統括し、必要な時に、必要な人に共有できる環境を構築しておく必要があります。

タレントマネジメントシステムでは、情報を統括・管理・分析する機能が備わっており、このようなツールを使うことで、非効率な情報収集からより高度な情報収集が可能になるのです。

タレントマネジメントシステムで学習経歴を見える化する

では、実際に弊社あたりずむ「Campus」の機能から、学習経歴を一元管理する機能をご紹介します。

あたりずむ「Campus」には「マイキャリア」という機能があり、ここで職務経歴・学習経歴・取得資格の情報を従業員が入力し、情報として登録します。また「研修フォローアップ」では、受講状況を確認できます。

従業員本人が自身の仕事、学びや自己啓発の履歴を残すことで、自身の振り返りになり、成長の軌跡が情報として目に見える形で保存されます。
詳しくは、弊社あたりずむサイトをご覧ください。

皆さんも経験がないでしょうか。「あれ、この研修、何年か前に受講したっけ?」「今年の目標管理で受講する予定の研修って何だっけ?」という受講した、これから受講する研修について、スケジュールや研修メモを見返すという記憶をたどった経験があると思います。

業務において研修で学んだ知識やスキルを実践しようと思い、その情報がどこにあるかがわからず、実践しないまま終わってしまうことは、自身のステップアップの機会を逃してしまったことと同じです。

上司として、組織や個人の育成計画を考えるときや目標管理の面談時にこれまでの学びの軌跡を事前情報として入れておきたいときに、手元に学習経歴や受講状況の情報がなく、必要な情報であるこれまでの記録を見ないまま対処することは避けたいことです。

また人事として、1年間の研修受講参加率や予算と必要経費の対比、受講者からのアンケートや上司からの反応は研修効果を測る上で重要な情報ですが、この情報が整理されていないため、必要に応じて、その情報をまとめることは非常に手間がかかり、都度の対応で分析する軸や精度にもブレが生じてしまいます。

このような事態が起きないようにするためには、タレントマネジメントシステムで育成情報や職務経歴の情報を一括で収集し、いつでもどこでも新しい情報を共有できる状態にしておきましょう。

タレントマネジメントで学習経歴を収集・活用するヒント

タレントマネジメントを導入し、システムにデータを収集・整備し、データ運用体制を構築することは特に重要です。ですが、この「データ収集」が導入時に、負荷の高い作業になります。とにかく人事部門が頑張って集めるのですが、どうやっても従業員の方の負担を避けることはできません。

システムを入れているため、Web上で入力できるのは利点です。ただその入力を人事部門がやるのか、従業員にお願いするのかという課題が生じます。入社時の情報やこれまで電子データ等で保持している情報は人事部門が入力できますが、従業員ひとりひとりの情報をすべて保持しているわけではないため、結局は従業員の協力を得なければならない、ということです。

ヒアリングの結果やアンケート回答という手段も併用しながら、直接システムに入力してもらう方法をとりますが、ここで立ちはだかるのが「従業員からデータが集まらない」という壁です。

なぜ従業員からデータが集まらないのでしょうか。色々考えられますが、大きくは3つあると考えます。

  1. データ収集の目的が不明確である

「なぜそのデータを集めるのか」という目的がわからなければ、従業員も協力できません。人事部門としては網羅的にデータを欲してしまう気持ちもわかりますが、何に利用するのか、どういったことに集めたデータを使い、分析するのかといった目的が明確になることで、求められているデータの重要性や優先度を従業員が判断でき、収集率もアップします。

  1. 警戒している

従業員にとって、このデータを預けるに足る信頼が会社側にあるか、ということも協力を得る重要なポイントです。データ収集においてもっとも警戒するのは、目的外のことに利用されてしまう、というものです。特に、評価と紐付けられるのではないか、意図していない人に開示されるのではないかなどが不安だという声はよく聞きます。これらが明確になっていないと、人事にデータを預ける、ということに非協力的になってしまいます。

  1. 従業員にとってのメリットが見えない

従業員にとって即座にわかりやすい、直接的なメリットが見えない、というのもデータ収集に協力してもらえない理由のひとつです。データ収集は将来的なパフォーマンス向上や従業員の満足度向上につながるものですが、直接的にはわかりづらく、間接的なメリットがあるものです。しかし、即座に理解しやすい直接的なメリットがないと収集が捗らないことがあります。例えば、データ収集の結果を従業員に共有する、または活用できるとなれば、直接的なメリットとして提示することができます。

データが集まらないという課題に対して、必要な視点として「従業員目線」で考え、行動することで解決できるのではないでしょうか。例えば、新しい事業やサービスを考えるとき、「ユーザー目線」に立つことで課題や仮説を導き出します。しかし、人事部門も従業員のひとりでありながら、その視点を持たず、施策を回してしまいがちです。
人事部門もデータ収集という施策だけに限らず、ユーザー=従業員という視点で課題や仮説を組み立てることは非常に有益です。

まとめ

いかがでしたか。

学習経歴といったデータだけに限らず、タレントマネジメントやシステムを活用するには、データ収集を何に使うのか、どう活用していくのかという目的や方針が重要です。その上で、従業員ひとりひとりの情報を必要なときに、必要な形で活用できるようになります。

人事部門としては、社内外に育成施策やその成果、効果について開示していくことが求められる中、より鮮度の高い、正確な情報を蓄積することで情報の開示はもちろん、分析結果を次の施策につなげるPDCAサイクルを効果的に回すことができます。

従業員の学びの軌跡、組織としての育成効果が目に見えれば、モチベーションやエンゲージメント向上にもつながり、さらに良い成長サイクル、企業文化が生まれていくようになります。
タレントマネジメントシステムで学習経歴を見える化してみてはいかがでしょうか。

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