人材育成におけるエンゲージメントとは?

最近様々な場面で「エンゲージメント」という言葉を耳にしたことがあるかと思います。「従業員のエンゲージメントを高めないと!」とか「顧客とのエンゲージメントが……。」なんてフレーズを使用している方もいらっしゃると思いますが、一体どのような状況をさしているのか、明確にイメージし言語化することはできますか?今回は、最近よく耳にする「エンゲージメント」の意味を再度整理するとともに、人材育成を使ってエンゲージメントを高める方法について紹介します。

エンゲージメントとは?

みなさんは「エンゲージメント」と聞いて、どんな意味が頭に浮かびますか?
多くの人は英語のengagementを覚える際に載っている一番有名な意味の【結婚・約束】と答えるのではないでしょうか。エンゲージリングなんてワードから馴染みのある言葉になってきていると思います。
しかし、「従事(没頭)している」、「(歯車が)かみ合っていること」、「(積極的な)関与」など、実は他にも様々な意味があります。※1
日本のビジネスの場における「エンゲージメント」が指す意味を改めて思い返してみると、どの意味ともとれる言葉として用いられている印象があります。その原因の1つとして「エンゲージメント」という言葉の意味を何となくのイメージで使用している人が多いため、どの意味合いともとれるようなふわふわした言葉になっていると考えられます。

ではビジネスの場ではどのように使用されているのでしょうか。
例えば、従業員のエンゲージメント向上には、働きやすい環境の整備、会社の理念やビジョンの発信・共感、従業員同士のコミュニケーション促進、離職防止とモチベーション向上、やりがい創出、教育など様々な面からの取り組みが重要だと言われています。ここから推測するに、「エンゲージメント」という言葉には、従業員の会社に対する従事具合や関与度合を指しているように思えます。しかし、視点を変えると、会社への愛着心など会社相手の婚約に近いようなニュアンスを匂わせているようにも感じ取れます。
「就活はお見合いみたいなもの」とは良く聞く言葉ですが、その感覚から行くと、まさしく婚約。会社と従業員が愛を誓いあい、支え合うという関係性を指しているようにも思えます。
顧客へのエンゲージメントも似たようなところがあり、表向きは顧客への積極的な関与を指しているようだが、その裏には愛着心まで含めているように感じます。よくSNSを活用して顧客へのエンゲージメントを高めるとい方法がありますが、あればSNSを通して顧客とのコミュニケーションを取り、積極的な関与を通して顧客に愛されるための施策なのかもしれません。
※1 参照元:https://eow.alc.co.jp/search?q=engagement

エンゲージメントという言葉が出てきた背景

では、なぜエンゲージメントという言葉をよく耳にするようになったのでしょうか。

それは、社会の変化が大きな影響を与えています。
かつての日本は多くの人のライフスタイルと企業の体制におけるお互いのニーズが見事に合致していました。
仕事は技術など練度が求められるものが多く、繰り返し訓練することで熟練していくので、終身雇用と年功序列が自然と主流になりました。
そのため企業は技術的にも長く勤めてもらいたいという想いがあり、従業員は就職することによって子どもが大きくなり支出が増えていくタイミングと合わせて給与が増え、安定した雇用と収入を得られるというお互いのニーズがマッチした関係性が成り立っていました。
ところが、社会が時代の変化に伴い著しく変化し、企業はその変化についていくことに必死で従業員のニーズに応える体力を失ってしまいました。また、繰り返し訓練を行って練度を高める必要のある仕事以外に、発想やアイデア、スピード感が求められる仕事も増えました。
ほかにも価値観やライフスタイルが多様化し、幸せの形も様々に増えたことによって、従業員のニーズもかつてのように画一化できず、どんどん企業と従業員の間に開きがうまれました。それにより、離職率や人材の定着率に課題を抱える企業が増えてきたのです。
この現実をどうにかしようと注目され始めたのが「エンゲージメント」です。
マーケティングの用語としても使用される、顧客とのエンゲージメントの方でも、社会の変化と価値観・ライフスタイルの多様化が共通していえることです。
昔は良いものが売れる時代でしたが、価値観やライフスタイルが多様化したことにより、最近は「良いもの」の定義も人によって多様化しました。そのため、顧客とのつながりを重視するエンゲージメントが注目を浴び始めました。ここには、エンゲージメントを測りやすいSNSというツールが登場したことも注目を浴びるきっかけにつながっていると推測しています。

人材育成とエンゲージメント

「それなら、以前と同じように従業員のニーズにあわせることができれば、より良いそして深い関係を気付くことができるのではないか。」と考えると思います。
では、従業員のエンゲージメントを高めていく為には、人材育成ではどんなことができるのでしょうか。

現在はいろいろな対応例が増えてきていますが、今回はその中から面白い取り組みを3つご紹介したいと思います。

① 選べるWebinar!多様な従業員のニーズに応える取り組み

従業員のニーズが多様化しているのであれば、選べるメニューを用意することでニーズを網羅していこうという考えから生まれた取り組みです。
最近はリモートワークもだいぶ普及してきたため、リモートワークに対応した人材育成も増えています。
この取り組みでは、従業員が興味を持ちそうな様々なテーマのセミナーをオンラインにて実施しています。おすすめのポイントは「1社も受注できなかった営業マンが教える営業マネジメント」など仕事やビジネスに関するものから、「いまさら聞けない?SDG’s」など全く関係ない分野のものまで、テーマが幅広く用意されており、自分の興味に会ったものを選ぶことができる点です。
Web上で参加ができるオンラインセミナーとなっているため、気軽に参加できますし、1つのセミナーの時間も短く設定されています。さらに、少し興味があったものに自由参加できるというハードルの低さも魅力的です。

② スポーツを通じて学ぶチームビルディング研修

従業員同士のコミュニケーション促進、そしてチームで1つのゴールに向かうための動きを体感することによって働きやすさ向上を狙った取り組みです。
スポーツといっても様々な種類がありますが、この研修で用いられるスポーツは複数人で行うチームスポーツであること、結果が運動神経よりチームメンバーとの協力により左右されるものであることの2点を抑えている必要があります。
面白い事例として今回は冬季オリンピックでも話題の【カーリング】を挙げたいと思います。
流行語「そだねー」に代表されるように、意外とポジティブなコミュニケーションが求められます。また、ただ氷の上で石を投げているように見えますが、実は石がどのくらいの速さで進んでいるか、今曲がっているのか・まっすぐ進んでいるのか等、投げる以外の人達が情報を瞬時に共有し、限られた時間の中で意思決定していくことが求められます。トップレベルのカーリングチームは関係性とコミュニケーションを深めるために1年のうち何か月も共同生活を送ります。この培われた関係性とコミュニケーションが、働きやすさやコミュニケーション促進に寄与するのです。
このようにスポーツという全く別の分野から、仕事に活かせる要素を学ぶことができるのです。

③ 現場のあるあるを形にした研修

人間はわからないことや知らないことに不安を覚えるといわれており、その不安をなくすことにより、モチベーションを向上したり、働きやすい環境を整えたりすることにフォーカスを向ける取り組みです。
現場でよくある話を題材に、自分だったらどうするか、どのようなことを考え、対応をするかを考え、ワーク形式で体験型の実践を行います。それにより実際に現場で同じようなシチュエーションに遭遇したときに、マイナスな気持ちになる機会を減らそうという仕組みです。ワークでの学びを活かしてうまく乗り切ることで、生産性も向上し、もっといろいろなことに取り組み、チャレンジしたいという前向きな心の余裕が生まれるのです。それにより研修以前と比べて働きやすくなったり、ネガティブなコミュニケーションが減って従業員同士のコミュニケーションが促進されたりします。

まとめ

いかがだったでしょうか。
時代の変化に伴い、変化を続ける人材育成。
使用される用語も、研修内容も日々変化し続けている中で、今回は最近よく耳にする「エンゲージメント」とはなんなのか、そしてエンゲージメントを高めていくための人材育成とはというところをポイントに様々な取り組みを紹介させていただきました。
従業員のニーズとの開きを埋めるためにも、新しい手法を取り入れてみましょう。

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