日本の全企業のうち9割以上を占めている中小企業。しかし、数年にわたり受けてきた新型コロナウイルスの影響や物価の高騰、そして少子高齢化に伴う深刻な人的資源不足により中小企業は引き続き厳しい状況が続いています。そんな中、これからも成長を続け企業が掲げている目標を達成し続けるためには、どのようなことから始めたらよいのでしょうか。
今回は中小企業におけるタレントマネジメントを活用方法についてご紹介します。
目次
タレントマネジメントを用いて中小企業で人的資源を最大限活用しよう
先日とある中小企業の人事部長とお話しする機会がありました。
「コロナ禍で一時期売り上げも伸び悩み苦戦しましたが、近年やっと軌道に乗ってきて、売上も回復してきました。ただ採用はまだ苦戦続きなんですよね。以前は求人を募集したら2・3名は採用できていましたが、最近は1名来れば良い方です。採用にも時間と労力はかかるので何か良い方法はないのでしょうか。」
そこでなぜ採用を行っているのか少し詳しく聞いてみました。
「目的は2つあります。1つ目は企業規模の拡大です。これからもっと人数を増やして規模を拡大したいと思っています。2点目は人材の確保です。とりあえず現在不足していると部署から申告があった場合は都度探すようにしています。」
このお話を聞いたときにもう少し社内で工夫できることがあるのではないかと思い、タレントマネジメントをご紹介しました。
タレントマネジメントは、従業員のスキルや能力、過去の経験などの情報を見える化し、能力が最大限に発揮できるような最適な人材配置を行ったり、必要に応じて人材育成を行うマネジメント方法です。
1990年代のアメリカでは人材の流動が激しく、CEOが将来の自分の後継者のために優れた人材を選別し、確保することが重要視されていました。しかし、優秀な人材のみにフォーカスが当たっていたため、全従業員のモチベーションを維持することはできませんでした。そこで、企業の生産性向上につなげるためにも、優秀な人材を定着させ、育成するという、人材確保から人材育成へと考えに変化が生まれました。
日本では新卒一括採用・年功序列型・終身雇用制度の「メンバーシップ型雇用」をこれまで採用していたため、人材の流動はあまり重要視されていませんでした。また、個々のタレント性よりも従業員全体の足並みが揃っていることが求められていました。しかし、少子高齢化に伴う人材不足や経済のグローバル化の加速に伴い、スキルの専門性が重要視されるようになりました。
ところが、これまでのやり方では、従業員のタレント性が見える化されていないため、企業にどのような人材がいるのかを正しく把握することが出来ていませんでした。
そこで注目されてきたのが、タレントマネジメントです。
現在の従業員の情報や業務に必要な人材を、タレントマネジメントを活用して見える化し把握することにより、新たに人材を採用しなくても、今いる従業員を配置しなおしたり、人材育成を行って、不足しているスキルを補うこともできます。
中小企業においてタレントマネジメントを導入して得られる3つの効果
「確かにタレントマネジメントを導入すれば、言われた通りに採用するだけではなく他の選択肢もうまれるという事がわかりました。他にも導入することによって得られる効果があれば、教えていただきたいです。」
すでに前述しましたが、タレントマネジメントを活用すれば最適な人材配置を行うことができ、さらにさまざまな効果を得ることが出来ます。
- 従業員の活性化
従業員一人ひとりが自分のスキルや能力を最大限発揮できるような人材配置を行い、環境を作ることにより、社内コミュニケーションを活発に行うことが出来るようになり、パフォーマンス力が上がります。
- 組織の生産性向上
従業員のパフォーマンス力が上がることにより、組織全体のモチベーションも向上し、生産性向上へと繋がります。組織の生産性が向上することにより、売上も伸び、会社全体の業績もアップも見込めます。
- 従業員の定着率向上
業績が上がることにより、従業員の満足度も上がり、従業員の定着率向上にも繋がります。この際に正当な評価を受けることが出来れば、従業員もより業務に邁進し、企業全体の士気も高まります。
しかし、タレントマネジメントを導入しただけでは、従業員のスキルや能力は発揮できません。導入を行う際に、企業側でも従業員のパフォーマンスが向上するような職場環境やプロジェクト内の雰囲気づくりを行うことも重要です。
また、従業員が正当な評価を受けられるような体制づくりを行う必要があります。
そのためにも、タレントマネジメントを活用し、評価基準を明確にし、評価する側もされる側も認識をそろえることで、従業員ひとりひとりが何を目標にすべきなのか自分で把握することが出来るようになり、迷うことなく集中して取り組むことが出来るようになります。
タレントマネジメントを中小企業で導入する際に気を付けたい4つの注意点
「タレントマネジメントを活用することにより、従業員の満足度が上がって、その好循環は企業の業績にもつながるという事がわかりました。しかし、いざ導入するとなるとやっぱり機能するかどうか不安になります。導入する際に気を付けた方がよいことはありますか?」
タレントマネジメントを導入しても、導入したことに満足してしまって、その後機能しなければ、導入時の作業をはじめとした苦労が無駄になってしまいます。
では、導入する際にどんなことに気を付ければよいのでしょうか。
- 自社に合わせた項目にする
中小企業の場合、組織の規模や業界に応じて、必要な項目や専門的なプロセスが発生します。そのため、それぞれの企業に合った内容に、項目を変更することによって、より高い効果を得ることが出来ます。
- 従業員への説明とコミュニケーション
タレントマネジメントを導入する際には、従業員側もなぜタレントマネジメントを導入するのかを正しく理解して取り組みに協力してもらう必要があります。またタレントマネジメントを継続的に活用していくためにも、従業員と現状の共有や今後のキャリア目標について話し合い、フィードバックを行うなど、定期的にコミュニケーションを取ることによってより効果的に行うことが出来ます。
- 従業員の人材育成環境
タレントマネジメントでは従業員一人ひとりの現状のスキルを把握すると同時に、今後どのようなキャリアを目標にしているのかを把握し、なるべくそれぞれに合った人材育成を行うことが望ましいです。そのためにも、研修や業務を通じての経験など、従業員が実際に学ぶ機会をもらえるような環境作りも重要です、中小企業の場合、限られたリソースを最大限に活用しながら、従業員の成長するために必要なプログラムの設計及び提供できるような環境作りが必要になります。
- 従業員に対する評価とフィードバック
タレントマネジメントを活用していく中で、従業員に対する評価とフィードバックは重要なカギとなります。中小企業では、評価のプロセスやフィードバック内容を明確にし、従業員も上司などの評価する側も共通認識として把握することにより、今後どうすればよいのかなど1on1ミーティングなどを活用しながら、目標に向かって努力することが出来ます。
このように自社に合わせたタレントマネジメントを運用することにより、従業員も評価される項目が増え、理想のキャリア像に近づくためにはどうしたらよいのか、明確に把握することが出来るようになります。
まとめ
いかがでしたか?
1990年代のアメリカで注目を浴びた【ダレンとマネジメント】。
日本でも少子高齢化に伴う人材不足などにより、人材確保に頭を抱えている中小企業が増えていて、注目されてきています。
そんな中、中小企業がタレントマネジメントを導入することにより、次のような効果を得られることが期待できます。
- 従業員の活性化
- 組織の生産性向上
- 従業員の定着率向上
しかし、中小企業でタレントマネジメントを導入する際、気を付けるべきこともあります。
- 自社に合わせた項目にする
- 従業員への説明とコミュニケーション
- 従業員の人材育成環境
- 従業員に対する評価とフィードバック
タレントマネジメントはただ導入するだけではなく、自社が掲げている目標を達成するためにはどのような情報を見える化しておくべきなのか正しく把握し、企業に合わせた項目の設定が必要となります。
最近では様々なタレントマネジメントシステムも出てきていますので、システムの活用も検討しながら、自社に合わせたものを導入してみてはいかがでしょうか。
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