タレントマネジメントの人材像を策定するヒント(DX人材)~データサイエンティスト~

日々世界が成長していく中で、企業が取り残されないためにも、様々な情報をいち早くキャッチアップすることが重要になります。そのなかでも著しく成長している分野として挙げられるのがDX分野です。企業が掲げる最終目標を達成するためにも、タレントマネジメントを活用し、企業にとってどのようなDX人材が必要なのかをいち早く把握し、育成や適切な人材配置を行う必要があります。

では具体的にどのような人材が求められているのでしょうか。今回はDX人材の中でも「データサイエンティスト」についてご紹介していきます。

タレントマネジメントを活用し、DX人材を育成しよう~DX人材・データサイエンティストとは~

様々な分野のDX化が促進されたことにより、業務に携わるにあたり必要となる情報や専門的知識も増えました。それに伴い、DX人材の育成に注目が集まっています。

しかし、先日とある企業の方とお話しした時にこのようなお話が出ました。
「弊社でもDX人材の育成が必要っていうのはわかっているのですが、そもそもどんな人材がいるのかしっかり把握できていないんですよね。そこがあいまいだと、結局育成計画の作成などが後回しになっていて…。」

ここで一つの指標としてご紹介するのが「DX推進スキル標準(DSS-P)」です。DSS-Pでは、企業や組織のDXの推進において必要な人材のうち、主な人材を5つの「人材類型」に区分して定義しています。その中の一つが今回のテーマである「データサイエンティスト」です。

データサイエンティストは、DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材だと定義されています。

データサイエンティストが求められる具体的な役割をご紹介します。

  1. 自社や自組織の競争力向上につながるデータ活用を実現する

「データサイエンティスト」は、データの発掘やデータを活用し、DXの取組みの推進、さらには、その最終目的である自社や自組織の競争力の向上に貢献するという役割が期待されています。そのため、データの活用や分析自体が高い専門性を必要とする場合が多いですが、データの活用や分析業務自体にとどまらず、その成果を自社や自組織の競争力の向上につなげることが必須であるという点を強く認識する必要があります。

また、 今回のDX推進スキル標準の対象には、社外の顧客に向けた製品・サービスに直接携わる「データサイエンティスト」だけではなく、社内のユーザーに対してサービスを提供する「データサイエンティスト」も含まれています。ただし、社内向けに業務を行う場合においても、自身の業務成果が、最終的に「自社や自組織の顧客に対して価値を提供しているかどうか」「顧客価値の拡大に十分に貢献しているかどうか」を常に意識することが重要なポイントとなります。

  1. DXにおけるデータ活用領域を担い、必要に応じて、他の人材類型と柔軟に連携する

「データサイエンティスト」は、DXの取組みのうち、データ活用領域の業務に対して責任を持って遂行する人材類型として定義されています。しかし、対象とするDXの取組みがデータ活用を主な目的とするものであれば、「データサイエンティスト」のみでDXを進めることもできる場合があります。

ただし、対象とするDXの取組みが、データ活用以外の領域も含むより広範なものであった場合、アーキテクト、デザイナー、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティなどの他の人材類型とも柔軟に連携を取りながら、DXの取組み全体の中で効果的な役割を果たすことが要求されます。

また、 「データサイエンティスト」は、データ活用に関する顧客やユーザー、 DXの取組みにおいて連携する他の人材類型の要望やニーズを十分に理解するとともに、ときには、それらの関係者にまだ十分に認識されていないような潜在的なニーズから、新たなビジネス創出の機会や業務改革の可能性を発見することなども強く期待されるのです。

  1. 他の人材類型との連携

データサイエンティストは単独でこなす役割が期待されている一方、ほかの役割を担っているDX人材と連携して、協働関係を構築し、円滑に作業を進めることも求められています。

では、どのようなことを求められているのかそれぞれ見ていきましょう。

・データサイエンティストとビジネスアーキテクトとの協働関係
データ分析結果から得られる示唆を踏まえた製品・サービスのアイデアの検討

・データサイエンティストとデザイナーとの協働関係
顧客・ユーザー理解や製品・サービス検証のための調査、データ取得、分析、および分析結果の見せ方に関する検討

・データサイエンティストとソフトウェアエンジニアとの協働関係
新たなデータ収集・蓄積・解析・可視化の仕組みと既存のシステム等との連携・接続の仕組みの検討

・データサイエンティストとサイバーセキュリティとの協働関係
データ管理やプライバシー保護に関するポリシーの検討

他の人材類型もそれぞれ求められている役割が異なりますが、人材を育成するためには時間も費用もかかります。
そこで、まずは今の企業にとってどのような人材が必要なのかを把握する必要があります。

タレントマネジメントを活用し、部署やグループごとにどのような人材がいるのか、どのような人材が不足しているのか、今後どのような人材を育てる必要があるのか、見える化し把握しておくことで、自社に会った人材育成を行うことが出来ます。

タレントマネジメントでDX人材・データサイエンティストを策定するヒント~データサイエンティストのロール~

「データサイエンティスト」といっても、業務の違いによって求められる役割が異なります。「データサイエンティスト」のロール区分は、一般社団法人データサイエンティスト協会の「データサイエンティストに求められる3つの力」(ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力)を参考にしたものであり、DSS-Pでは、次の3つの力を「ロール」として切り分け定義しています。

ではそれぞれのロールや役割について詳しく見ていきましょう。

データビジネスストラテジスト

「データビジネスストラテジスト」は、事業戦略に基づくデータ活用戦略を立案し、他のロールのマネジメントや他の人材類型との連携を推進するロールと位置付けられています。

事業戦略に基づくデータ戦略を立案し、データ活用領域のプロジェクトのマネジメントを行うだけでなく、現場部門と一体となって、データを活用する業務の設計や見直しも行う役割を担っています。すなわち、DXを推進する他の人材類型や社内の現場部門等と「データサイエンティスト」を結びつける役割を担っています。そのため、ビジネス系やマネジメント系のスキルが他のロールに比べ必要となります。また、「プライバシー保護」などの各種法制度等に関しても、知識とともに高い実践力が求められるのです。

データサイエンスプロフェッショナル

「データサイエンスプロフェッショナル」は、データサイエンス領域の専門性に基づき、 データの処理・解析や、その結果の評価等を担うロールと位置付けられています。

データの処理・解析を行うほか、その結果を評価し、新規事業の創出や現場業務の変革・改善につながる知見を生み出す役割を担っています。また、現場部門でのデータ活用の仕組みづくりやエンドユーザーに対する教育・サポートを行うという役割も担っており、データの処理・解析だけではなく、その結果の活用の場面においても一定の責任を負っています。そのため、データの分析やその結果の評価に関するスキルのほか、現場のユーザー等を含む多様な関係者と適切にコミュニケーションを行うための平均的なパーソナルスキルなども必要となります。また、急速に発展しているデータサイエンス分野を中心に、先端技術の動向を把握し、自社で活用できる技術を検証する役割も担うため、「その他先端技術」についても、他のロールよりも深い理解が求められるのです。

データエンジニア

「データエンジニア」は、効果的なデータ分析環境の設計・実装・運用を担うロールと位置付けられています。

データ活用基盤として、リアルタイム、動的(dynamic)、自動(automatic)に最適化されるようなデータ分析環境を設計・実装・運用する役割を担っています。そのため「バックエンドシステム開発」や「クラウドインフラ活用」に関しても、ソフトウェアエンジニアと同等の高い実践力が必要となります。

「データサイエンティスト」を目指す人材は、上の3つのロールのうちいずれか得意とする領域から専門性を高め、伸ばしていくことが理想です。ただし、「データサイエンティスト」としてさらなるキャリアアップを目指したいと考えている場合は、得意領域を中核として、徐々に複数のロールを担えるようになれば、活躍の幅を広げることが出来るようになります。

そのためにもタレントマネジメントを活用し、従業員が「将来どのような人材になりたいのか」を明確にしましょう。なるべく従業員の希望に沿った人材育成や人材配置を行うことにより、業務に対するモチベーションが向上し、企業全体の士気を高めることへ繋がります。

DX人材・データサイエンティストが担う責任・主な業務~タレントマネジメントを活用し、人材像を明確にしよう~

「データサイエンティスト」の3つのロールはなんとなくわかったけど、それぞれの業務についてもう少し知りたい」と思っていただいた方もいるかと思いますので、最後にデータサイエンティストのロールについてもう少し詳しく、DSS-Pよりご紹介いたします。

データビジネスストラテジスト

DXの推進において、事業戦略に沿ったデータの活用戦略を考えるとともに、戦略の具体化や実現を主導し、顧客価値を拡大する業務変革やビジネス創出を実現する責任を担っています。

具体的な、主な業務としては下記のとおりです。

• 自社の事業戦略におけるデータの活用の是非の判断や事業戦略を実現するためのデータ活用戦略を策定する
• データ活用戦略を実現するまでのプロセスを企画・主導し、他の人材類型や他のロールとの連携のコーディネート、データ活用領域のプロジェクトのマネジメントを行う
• 現場部門と一体となって、データを活用する業務の設計や見直しを行い、新規事業の創出や現場業務の変革・改善を達成する
• 取組みの成果や課題を把握し、次の取組みへとつなげる

データサイエンスプロフェッショナル

DXの推進において、データの処理や解析を通じて、顧客価値を拡大する業務の変革やビジネスの創出につながる有意義な知見を導出する責任を担っています。

具体的な、主な業務としては下記のとおりです。

• AI・データサイエンス領域の専門知識に基づくデータの処理・解析を行い、その結果を適切に評価・分析する
• データの処理・解析結果から、新規事業の創出や現場業務の変革・改善につながる知見を生み出し、適切に可視化を行う
• 現場部門でのデータ活用の仕組みづくりやエンドユーザーに対する教育・サポートを行う
• データ活用の仕組みの運用状況や新たなビジネス要求を踏まえて、分析モデルの改善を行う
• AI・データサイエンス領域の新技術を把握し、その可能性を検証する

データエンジニア

DXの推進において、効果的なデータ分析環境の設計・実装・運用を通じて、顧客価値を拡大する業務変革やビジネス創出を実現する責任を担っています。

具体的な、主な業務としては下記のとおりです。
• 目的に応じたデータ(業務データやログデータ等)の収集・処理・解析等を効果的に行うためのシステム環境を設計し、その実装を主導するとともに、最適な稼働を実現する
• 状況の変化に応じて、リアルタイム、動的(dynamic)、自動(automatic)に、最適なデータ分析環境を調整・実現する
• データの処理・解析に必要なデータの加工やデータマートの作成を行う
• 他のロールが適切にモニタリングを行うための環境を整備する

必要なスキルをいくつか挙げると変革マネジメントやプロジェクトマネジメントなどこれから社内業務をいかに良くするかを把握するために必要な要素が主となります。

まとめ

いかがでしたか?

DX人材の需要が高まる中、少子高齢化に伴い人材不足が進んでいる現状。

今いる従業員のDX人材育成を行うためにも、まずはどのような人材があるのか把握していただくために、今回はDX推進スキル標準の中でDXを促進する主な人材として5つの人材類型のうちの1つであるデータサイエンティストについてご紹介しました。

データサイエンティストは大きく分けて3つの役割が求められています。

  1. 自社や自組織の競争力向上につながるデータ活用を実現する
  2. DXにおけるデータ活用領域を担い、必要に応じて、他の人材類型と柔軟に連携する
  3. 他の人材類型との連携

また3つロールとそれぞれの担う責任や主な業務についてもご紹介しています。

  • データビジネスストラテジスト
  • データサイエンスプロフェッショナル
  • データエンジニア

しかし「データサイエンティスト」の場合、3つのロールのうち得意分野を1つ伸ばすだけではなく、複数のロールを担えるようになることによってキャリアアップにつなげることが出来ます。

DSS-Pでは今回ご紹介した「データサイエンティスト」のほかにも4つの人材類型が定義されているため、それぞれの情報を理解し、自社にとって現在どのような人材が必要なのかを正しく把握する必要があります。

そのためにも、まずはタレントマネジメントを活用し、従業員の所持しているスキルや今後どのように活躍したいかなどそれぞれの状況を見える化し、どのような人材育成が望ましいのかを把握しましょう。

自社に適したDX人材を育成することは、会社の即戦力にもつながり、企業の飛躍的な成長へとつながるのです。

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