タレントマネジメントを活用してDSS-Lの導入をしてみよう

企業のDX化が進み、目まぐるしく変化する中、適応する人材を育て、適切な人配置を行うためにはタレントマネジメントを活用し、様々な情報の見える化を行って現状を把握する必要があります。また、DX人材を育てるためには、従業員一人ひとりがDXを理解し興味を示し、自主性をもって積極的に学ぼうという姿勢が重要になります。しかし、これからも活躍する人材を育てるためにはどのような基準を満たせばよいのでしょうか。

今回は、個人の学習や企業の人材確保・育成の指針となる「デジタルスキル標準(DSS)」の中から「DXリテラシー標準(DSS-L)」についてご紹介します。

DSS-Lの全体像を把握しよう~タレントマネジメントから見える必要なDX人材

はじめに「DXリテラシー標準(DSS-L)」とはどのようなものなのでしょうか。

「DXリテラシー標準(DSS-L)」は社会やビジネス環境の変化に対応すべく、企業や組織を中心に社会全体のDXが加速している中で、全てのビジネスパーソンが生き抜くために身につけるべき能力・スキルの標準として、一人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分にとって必要な事と受け止め、これからの社会に適応するために行動できるようになってほしいというねらいのもと定めた基準です。

この標準はDXに関するリテラシーとして身に着けるべき知識の学習に関する指針で、4つの土台から構成されています。

①マインド・スタンス
社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要な意識・姿勢・行動を定義しています。

②「Why」DXの背景
DXの重要性を理解するために必要な、社会、顧客やユーザー、競争環境の変化に関する知識を定義しています。

③「What」DXで活用されるデータ・技術
ビジネスの場で活用されているデータを読み活用する力やAIやネットワークなどのデジタル技術に関する知識を定義しています。

④「How」データ・技術の利活用
ビジネスの場でデータやデジタル技術を利用する方法や、活用事例、セキュリティやコンプライアンスに対する留意点に関する知識を定義しています。

以前お客様より、「デジタルスキルを持っている人材を一通り確保できれば育成しなくても何とかなりますか……?」という質問を何度かいただきました。

しかし、その答えは「No」です。

本標準に沿って学び、DXリテラシーを身に着けた人材が増えることは、社内のDX化を促進すると同時に周りの学習意欲の向上につなげることが出来ます。ただし、ここで重要なことは一度学んだら終わりではないという事です。DXの場合、情報が日々目まぐるしく更新されるため、常に学び続ける姿勢が求められます。

また企業側が求めている人材像を把握できていない場合、デジタル人材が採用できたとしても、適切に人材配置を行うことが出来ずモチベーションが低下し、最悪の場合離職につながる場合もあるのです。

先日とある企業の部長さんとお話しした時にもDX人材に関する話題が上がりました。
「弊社でも様々な業務のデジタル化が進んでいて、対応した人材の採用とともに社内の従業員の育成をしないといけないなと考えています。でも、正直私たちが何もわからずどこから始めていいかわからないんです。人材不足で採用も進まず、どうしようか頭を抱えています。」

そこで私からも一つ質問をしてみました。
「具体的にどのような人材が不足しているのですか?」

すると、部長さんは少し考えた後に「いわれてみれば、それもわからないですね。」と返ってきたのです。

そうなのです。
さまざまな企業の方からDXを推進する際に人材が確保できないという相談を受けるのですが、その原因として自社でどのような人材が不足しているのか把握していないという事があげられます。

そこで、タレントマネジメントを活用し、従業員の獲得しているスキルの状況をはじめ様々な情報を見える化することにより、現在どのような人材を補うか、もしくは育成しなければいけないのかを把握することが出来るのです。

タレントマネジメントを活用した適切な人材配置のためにスキルや学習項目の概念を理解しよう

「DXリテラシー標準(DSS-L)がどのようなものなのかをなんとなく把握することはできたのですが、具体的にどのようなことを学んだ方がいいのでしょうか。」
今回はそれぞれのゴールと学習項目事例を踏まえながらいくつかご紹介します。

①マインド・スタンス
本項目は社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要なマインド・スタンスを知り、従業員自身の行動を振り返ることが出来るようになることがゴールです。

▽学習項目
・変化への適応
環境や仕事・働き方の変化などを受け入れ、適応するために従業員自ら主体的に学習できているかどうかがポイントとなります。
例)新しい技術に関する書籍や新聞記事を自主的に読み情報収集を行っている

・常識にとらわれない発想
顧客・ユーザーのニーズや課題に対応するためのアイデアを、既存の概念や価値観にとらわれることなく考えることが出来るかどうかがポイントになります。
例)寄せられているユーザーからの意見だけではなく、ユーザーの行動からも分析を行い、言語化されていないニーズを見つける

・事実に基づく判断
勘や経験から判断するだけではなく、客観的な事実やデータに基づいて、物事を見たり、判断したりしているかどうかがポイントになります。
例)売り上げ目標を設定する際に、例年と同じ水準を設定するのではなく、市場の状況などを踏まえながら挑戦などを加味して設定する

・Why DXの背景
本項目は人々が重視する価値や社会・経済の環境がどのように変化しているか把握し、DXの重要性を理解出来るようになることがゴールです。

▽学習項目
・社会の変化
世界や日本社会におきている変化を理解し、その中で人々の暮らしをよりよくし、社会課題を解決するためにデータやデジタル技術の活用が有用であることを知っているかどうかがポイントになります。
例) 日本と海外におけるDXの取組みの差をどのように補うことができる

・顧客価値の変化
顧客の価値に対する概念を理解し、顧客・ユーザーがデジタル技術の発展により、情報や製品・サービスへのアクセスの多様化、人それぞれのニーズを満たすことへの欲求の高まりなど、状況がどのように変わってきたかを把握しているかどうかがポイントになります。
例)動画・音楽配信がなぜ普及したのかをユーザーの声とともに説明できる

・競争環境の変化
データ・デジタル技術の進展や、社会・顧客の変化によって、既存ビジネスにおける競争力の源泉が変わったり、従来の業種や国境の垣根を超えたビジネスが広がったりしていることを理解できているかがポイントになります。
例)電子媒体の普及により出版業・書籍流通業における環境変化をデータとともに説明できる

・What  DXで活用されるデータ・技術
DX推進の手段としてのデータやデジタル技術に関する最新の情報を把握したうえで、その発展の背景への知識を深めることができるかどうかがポイントになります。

▽学習項目
・データを読む・説明する
データの分析手法や結果の読み取り方を理解し、目的に応じて分析し、適切に説明できるかどうかがポイントになります。
例)データや事例から重複に気が付き、データのお整理ができる

・データによって判断する
期待していた結果とは異なる分析結果が出た際に、その差が重要な知見となることを理解し、さらに分析ができるかどうかがポイントになります。
例)データの信頼性の判断・明示できる

・AI
AIの生まれた背景や仕組みを理解し、AIができること、できないことを知っていて説明できるかどうかがポイントになります。
例)過去のAIブームにおいて中心となった研究や技術を説明できる

・How データ・技術の利活用

データ・デジタル技術の活用事例を理解し、その実現のための基本的なツールの利用方法を身につけたうえで、留意点などを踏まえて実際に業務で利用できるかどうかがポイントになります。

▽学習項目
・セキュリティ
セキュリティ技術の仕組みと個人がとるべき対策に関する知識を持ち、安心してデータやデジタル技術を利用できるかどうかがポイントになります。
例)IDやパスワードが正しく管理されている

・モラル
個人がインターネット上で自由に情報のやり取りができる時代において求められるモラルを持ち、インターネット上で適切にコミュニケーションできているかどうかがポイントになります。
例)写真の位置情報による住所の流出がないか対策している

・コンプライアンス
プライバシー、知的財産権、著作権の示すものや、その保護のための法律、諸外国におけるデータ規制等について知っているかどうかがポイントになります。
例)個人情報保護法の内容を把握している

DXリテラシーを獲得するにはDXが必要とされる背景、DXで活用される技術に関する知識や理解、実際の活用方法を学び理解することが大切です。また、これらのスキルを理解する姿勢や行動などマインドセットの体得も重要になります。

それぞれの項目のゴールに向かって必要な人材を育成していくためには、社内の従業員のスキル情報を把握するとともに、今後どのような人材になりたいかに注目する必要が出てきます。従業員がモチベーション高く意欲的に取り組んでもらうためにも、タレントマネジメントを活用し、どのようなスキルアップを望んでいるかを把握し適切な人材配置を行っていきましょう。

DSS-Lの活用法~タレントマネジメントで見える化された情報から考えてみよう

上記で「DXリテラシー標準(DSS-L)」それぞれの項目のゴールや学習項目についてふれましたが、学習したことをどのように活用できるのかまだイメージできていないという方がほとんどだと思います。

今回はとある企業の活用例をご紹介します。
先日、ある企業でDX化を進める際に、まずは従業員の「マインド・スタンス」のゴールを「社会変化の中で弊社が新たな価値を生み出すために必要なマインド・スタンスを知り、従業員自身の行動を振り返ることができるようになる」と設定しました。

やはり企業が成長するためには従業員一人ひとりが積極的に動いてくれるような姿勢を持ってくれることが望ましいと考えたからだそうです。そこで、従業員に「このゴールを達成するために1か月まずは頑張ってほしい」と伝えました。しかし、1か月たって従業員に話を聞いてみると、実際に行動に移した人は1割程度だったそうです。

なぜ、9割の従業員は行動に移すことが出来なかったのでしょうか。

答えは皆さんと同様「企業全体で目指しているもののイメージが出来ておらず、何から始めたらいいかわからなかった。」という意見がほとんどでした。

実は「マインド・スタンス」は従業員一人ひとりに求める行動や姿勢ではありますが、企業全体でどのような目標をもって、どのように取り組みを行っているのか常に明示しておかないと、従業員の目標も不明確になってしまい取り組む姿勢も消極的になってしまいます。

そのため企業はタレントマネジメントを活用し、企業全体の目標を見える化し、どのような方針で取り組んでいるのかを常に従業員に共有すると同時に、重要となるマインド・スタンスを見える化し、どうやったら企業全体に浸透するのかを考えなえればいけません。

また従業員は企業が見える化した情報を基に必要なマインド・スタンスは何なのかを知ると同時に、自分の日々の行動や業務に対する姿勢にどのように落とし込むことが出来るか、どうすればより良くなるかを常に考える習慣をつけるようにしましょう。
そのような習慣をつけることにより企業が目指している目標に向かって従業員が一致団結して取り組むことが出来るようになるのです。

まとめ

いかがでしたか?

さまざまな場面でDX化が進む中、デジタル人材を育てるためには個人の学習や企業の人材確保・育成の指針となる「デジタルスキル標準(DSS)」が基準となっており、今回はその中でも「DXリテラシー標準(DSS-L)」についてご紹介しました。

企業が目標を達成するためにはどのようなデジタル人材が必要なのか、社内の人材を育成ることにより補えるのかどうかなど、様々な課題があるとは思いますが、タレントマネジメントを活用することにより、様々な情報が見える化され、従業員はどのような人材になれるのか、そのためには何をすればいいのかを改めて把握することが出来ます。

しかし企業が積極的に取り組むことも大切ですが、従業員一人ひとりが自分のことととらえ、積極的に学習していく姿勢が大切です。そのためにもタレントマネジメントを活用し、どのような人材になりたいのか目標を明確にし、どうすればそのような人材になれるのか把握する必要があるのです。

企業のさらなる成長につなげるためにも、タレントマネジメントで見える化された情報を基に「DXリテラシー標準(DSS-L)」の浸透を促進させていてはいかがでしょうか。

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