コロナ禍が長らく続く中、私たちの生活にも様々な影響を受け、多くの変化が起こりました。それは企業でも同じで、それに伴い急激な変化への対応を余儀なくされました。その際に、今までの人材管理方法では管理が難しくなり、新しい管理方法に変更をしたいが、どれにしたらよいのか正直迷っているという企業も多いのではないでしょうか。
今回はその中でも話題になっている「タレントマネジメント」を導入したらどのような情報が可視化されるのか、詳しく見てみましょう。
タレントマネジメントを導入してみよう~なぜ可視化が重要?
先日とある企業の社長とお話をしました。
「私の会社も軌道に乗ってきたので、新たに社員を増やそうと思っているんです。今はまだ社員が少ないので、すべての業務に携わりながら内容等を把握できているんですが、規模が拡大するとすべては把握できなくなって誰かにマネジメントを任せないといけなくなります。ちゃんと任せられるかが心配で……。そこで、合わせてタレントマネジメントを導入したほうがいいという声が上がったんですが、今も結構仕事が立て込んでいるので、会社に合うかどうかも判断できていなくて……。」
まずタレントマネジメントとはどのようなものなのでしょうか。
タレントマネジメントとは、従業員の今持っているスキルや能力、今までの経験を可視化し、最大限に生かせるよう、戦略的な人材配置や人材育成に活用するマネジメント手法です。
日本ではこれまで、新卒一括採用・年功序列型・終身雇用制度の「メンバーシップ型雇用」を採用している企業が多く、従業員の組織への帰属性が求められていました。しかし、経済のグローバル化に伴い、世界とビジネスで戦うスピード感や業務への専門性への要求が高まり、人材のタレント性が重要視されてきました。また、フリーランスをはじめ多様な雇用形態が増えたことにより人材の流動性も激しくなってきました。また、少子化による労働人口の減少によって、人材の争奪戦が激化しているとともに、人材を定着させるにはどうしたらよいかというところに目が向けられるようになりました。
そこで、1990年代に人材の流動性が激しいアメリカで提唱されていた、優秀な人材を定着させるための人材戦略の一つであるタレントマネジメントが注目されているのです。
経営を行う上で、人的資源は最も重要な経営資源の1つです。人材情報の可視化を行うことにより、企業が掲げている目標を達成するのに必要な人材を最適に配置できるようになるのです。
タレントマネジメントから可視化できる従業員情報とは?
では、タレントマネジメントを導入するとどのような情報が可視化できるのでしょうか。また、その情報はどのように今後の人材配置や育成に活かすことが出来るのでしょうか。
今回は大きく分けて5つの項目でご紹介します。
- 従業員に関する基本的な情報
社内の従業員を検索するときなどに必要な項目で、従業員の今までの所属部署や現在の役職、等級を可視化し、把握することが出来ます。
ただし、従業員の基本属性は昇進や転勤などで変更されることが非常に多いため、変更があればすぐに更新を行って、常に最新の情報が把握できるようにしておくことで、最適な人材配置を行うことが出来ます。
- 従業員の能力やスキルに関する情報
従業員の現在持っている能力やスキルに関する情報を可視化し、把握することが出来ます。例えば、保有している専門的な資格やTOEICなどの試験の点数がこの情報に該当します。
しかし、資格などを持っていなくても、今までの業務経験などから高い能力やスキルを持っている従業員も存在します。そのため、社内で能力やスキルに対する評価基準を設けることで、従業員側が積極的に情報を提供してくれるようになります。資格だけではなく、今までの経験で培った能力やスキルも把握することにより、最適な人材配置を行うことが出来ます。
- 従業員の行動に関する情報
従業員の勤務時間や早退・遅刻・欠勤の回数、月の残業時間などの勤務データや、打合せの際の資料作成にかける時間など、普段の仕事におけるタイムスケジュールなどを可視化し、把握することが出来ます。
業務に対するモチベーションが高くても残業時間が著しく多い場合は、業務の半分を他の従業員に任せた方がよいなど事業のスケジュールを組む際の人材配置の際に必要な情報となります。
また研修を受ける前と研修を受けた後での、業務時間への影響なども把握することにより、今後の人材育成に対するデータも獲得することが出来ます。
- 従業員の価値観や考え方に関する情報
従業員を育てていくにあたり、現在仕事に対して何を求めているのか、どのような仕事にやりがいを感じているのか、今後どのような仕事をしたいと思っているのかなど、仕事に対するモチベーションや今後のキャリアプランをどのように思い描いているかを可視化して把握することができます。これらの情報をから、新規プロジェクトなどに対して適切な人材配置を行うことにより、業務効率を向上させることが出来ます。また従業員の希望になるべく応じて研修を受けてもらったり、業務に取り組んでもらうことにより、モチベーションの向上にもつながり離職率の低減につながります。
- 従業員のキャリアに関する情報
従業員がこれまで学歴・職歴・所属してきた部署の履歴だけではなく、今までどのような仕事を手掛けてきてどのような評価を受けたのかといった情報が可視化することが出来ます。今までの研修の受講歴や社内での表彰された回数をはじめとした社内イベントも把握できれば、より客観的に評価することが出来ます。
この情報を管理することにより、従業員のスキルや能力、今まで手掛けてきた仕事の方向性を知ることが出来、適切な人員配置にもいかすことが出来ます。
この時に重要なのは基本情報をはじめ、どの情報も常に最新の情報を把握して置ける状況が望ましいという事です。そのため、企業側が情報を更新することも大切ですが、従業員側でも常に最新の情報へ更新できるような環境作りのために、タレントマネジメントシステムの導入なども検討しましょう。
タレントマネジメントを導入し可視化するメリット
従業員の情報が可視化されることにより、様々な情報が把握できることはわかったけれども、それがわかったことによりどのようなメリットがあるのだろう?と疑問を持たれる方もいるでしょう。
そこで今回は3つの視点から企業側のメリットを見てきましょう。
- 人事評価
今まで評価する側の主観によって評価軸が異なっており、従業員側も正当な評価を得られているのか疑問に思ったり、その評価に不満を抱いているという事例も少なくありませんでした。タレントマネジメントを導入することにより評価基準も可視化することが出来、従業員側でも今後の目標を立てやすくなります。
- 人材育成
従業員が今後どうなりたいかのビジョンが可視化されることにより、こちらもどのようなステップアップが望ましいか人材育成の方針を決めやすくなります。また、従業員の課題に対して研修で強化したり、今まで実績がある部分を伸ばすような人材配置を行うことにより的確な人材配置を行うことが出来、従業員側も成長を感じることが出来ます。
- 採用
従業員情報の可視化を行うことにより、現在会社に必要な人材を把握し、適切な採用および採用後の人材配置を行うことが出来ます。また、新入社員の情報の可視化を行うことにより、従業員の入社後の目標や今後の成長モデルも把握しやすくなります。
このように様々な情報を可視化することにより、企業側にも従業員側でも何が必要な情報なのかを整理できると同時に、お互い納得した上で業務に取り組むことが出来るのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
時代の変化に伴い、今までの「メンバーシップ型雇用」が難しくなったことにより、注目を集めているタレントマネジメント。経営資源の重要な1つである人的資源を、タレントマネジメントを導入し可視化することにより様々な情報を把握することが出来ます。
- 従業員に関する基本的な情報
- 従業員の能力やスキルに関する情報
- 従業員の行動に関する情報
- 従業員の価値観や考え方に関する情報
- 従業員のキャリアに関する情報
またタレントマネジメントを導入し様々な情報を可視化することによって企業側も人事評価面、人材育成面、採用面でメリットがあります。
導入時にはどのような情報を必要としているのか今一度整理が必要なため作業が発生しますが、今後お互いの目標を明確にし、モチベーション高く業務を遂行していく上でも、従業員と協力して導入をしてみてはいかがでしょうか。
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