タレントマネジメントを活用したキャリアパスのススメ

少子化による新卒一括採用制度の揺らぎ、時代の流れによる終身雇用制度の崩壊と転職のハードルの低下。多くの企業が人材不足に悩んでいます。そんな中、企業がキャリアパスをどれだけ示せるかというのが、重要になってきているのをご存じでしょうか?

今回は、企業がキャリアパスを明示するメリットについてご紹介しながら、昨今話題になっているタレントマネジメントを活用したキャリアパスについてご紹介してまいります。

タレントマネジメントとキャリアパス

キャリアパスとは、キャリア、いわゆる職歴と、パス(道)を意味する言葉です。
職歴のモデルルートとイメージしてみてください。

入社してから、どのような業務を行い、どのように昇進していくのか。
業務や昇進に必要なスキルや経験は何なのか。
それらを示したものがキャリアパスとなります。

例えば、IT企業のシステムエンジニアが、プロジェクトリーダーとしてのポジションに昇進していくためには、まずは3年ほどテスト業務や実装などの実務経験を経て、研修などでプロジェクトマネジメントのスキルや知見を身に着けていく必要があります。

このように、目指すポジションに到達するためのモデルルートを企業が示したものが、キャリアパスとなります。
キャリアパスを企業が示していくためには、社内にある職務と、それぞれの職務に必要なスキル・経験を明確にしておかなければなりません。

実は、ここでタレントマネジメントが大いに役立ちます。
タレントマネジメントとは、人事戦略の一つで、簡単に言うと、「企業で働いている従業員の能力やスキル、適性を発揮してもらう」という方針で、人事施策を決定・実行し、企業や組織の生産性を高める戦略のことです。

戦略的に人事施策を決定、実行するために、様々な従業員情報を見える化していることが一つのポイントになっています。すなわち、タレントマネジメントにきちんと取り組んでいると、従業員情報が見える化されているので、企業は社内にある職務や、それぞれの職務に必要なスキル・経験を把握することができ、キャリアパスを示しやすくなるのです。

タレントマネジメントを活用してキャリアパスの提示に取り組むと、より抜けもれなく、多様なキャリアパスを示せるようになるかもしれません。

タレントマネジメントを活用したキャリアパスのススメ

では、タレントマネジメントを活用してキャリアパスを明確にしていくと、企業にどんなメリットがあるのでしょうか。企業がキャリアパスを明確に示せることで、得られるメリットが、大きく3つあります。

メリット① モチベーションが上がる

キャリアパスが示されているということは、従業員が目指したい役職や役割、仕事にたどり着くまでのステップが明確になっているということです。ステップが明確であれば、何をすれば目指す場所にたどり着けるかがわかるので、主体的に取り組む意欲の源泉になります。

例えば、研究職として入社したにもかかわらず、工場の掃除という業務を任された場合、通常なら「なぜこんなことをしなければいけないのか。自分の仕事ではないのではないか?」と不満がたまってしまいます。

しかし、キャリアパスがきちんと明示されていれば、工場の掃除を通して、研究職に必要な工場現場の全体像の把握という知見が得られるということがわかり、研究の業務に生かそうと主体的に取り組むことができるようになるかもしれません。

また、評価も、キャリアパスの考え方に基づいて行われていれば、透明性を持つことができ、納得のあるものになります。不明瞭な評価を受けて、モチベーションを下げるということを、防ぐこともできるのです。

メリット② 必要な人材を育成できる

会社に必要な職務に基づいてキャリアパスを示すことができれば、従業員に必要なスキルや経験を積ませることができ、企業の経営に必要な人材を育成することができるようになります。

例えば商社の場合、花形のポジションはバイヤーかもしれません。ただ、バイヤーだけでは商社ビジネスは成り立ちません。

どんな会社にも存在する経理や人事などのバックオフィスはもちろん、商品の流通を管理する人や、適正な在庫管理をする人も重要な役割を担っています。

明確なキャリアパスが示されていない場合、なんとなく、花形部署で結果を上げている人が、上司にふさわしいような風潮が漂います。ところが、企業がビジネスを遂行することを支えるマネージャーになるためには、経理や流通、在庫管理などの知見も必要なはずです。

キャリアパスを明確に示すことができれば、マネージャーという役割に必要なスキル、経験が多岐にわたることがわかり、単に花形部署のエースだけが昇進するというバランスの悪い企業構造を防ぐことができます。

メリット③ 離職率を減らすことができる

業がキャリアパスを明示していることによって、従業員との面談の際に、従業員がどんなキャリアパスを望んでいるのか、企業側は従業員にどんなキャリアパスを求めるのか、すり合わせの話が行いやすくなります。

例えば、部下との面談の際に、会社側から目標を与えたり、もっと頑張ってほしいことを伝えたりする場面があるとします。
その際、なぜこんな目標なのか、なぜもっと頑張ってほしいのか、キャリアパスを示しながら、「この役割を担ってほしいからやってほしいんだ」と伝えられると、意図がわかりやすく伝わります。

また、部下からも、本当はどんなキャリアを望んでいるのか、キャリアパスを確認しながらヒアリングできると、部下が望む方向性と、組織が求める方向性の確認と、すり合わせの話し合いを行えるので、「こんなはずじゃなかった」「これは私がやりたかった仕事ではない」というミスマッチを防ぐことができ、離職率低下に寄与するのです。

これら3つのメリットを得るためにも、キャリアパスをきちんと機能させる必要があります。
そのために、タレントマネジメントを上手く活用していきましょう。

タレントマネジメントの導入の始め方については、「タレントマネジメント導入に押さえておきたい3つのステップ」に詳しく紹介されていますので、そちらをご覧ください。

タレントマネジメントを活用したキャリアパスの示し方①

タレントマネジメントを導入したら、キャリアパスを示すにあたり最初にすることは、経営目標を達成するために必要な職務を定義することです。
経営目標を達成していくためには、社内にいる従業員が、様々な役割を担い、遂行していく必要があります。

例えば、利益を1億円出す、という目標を掲げた場合、売り上げを上げる働きをする人達と、コストを抑える働きをする人達が必要になります。
売り上げを上げる人達には、どんな役割があるか。

新規開拓、既存拡大を行う営業、戦略を立てるマーケティング、営業が機能するように管理する営業マネジメント、顧客とのやり取りをスムーズにする営業事務、そしてこれらの役割を統括管理するマネージャー…。実に様々です。

このように、企業が掲げた営業目標を達成するには、どんな職務があるかを考え、定義しましょう。
タレントマネジメントに取り組んでいれば、すでに社内にある職務は洗い出しされ、見える化されています。すでに社内にあるものから定義していき、足りないものは新たに補うという形で活用し、職務を定義していきましょう。

タレントマネジメントを活用したキャリアパスの示し方②

職務を定義することができたら、次に、職務に必要なスキルや経験、能力を定義しましょう。
例えば、新規開拓をする営業に必要なスキルや経験、能力には、ヒアリング力やプレゼン力、クロージングのスキル、リードを獲得してくる知見、折れない心や顧客に寄り添うマインドなど、様々なものがあります。

このように、定義した職務でしっかりと結果を出すために必要な、スキルや経験、能力を考え、定義します。タレントマネジメントに取り組んでいると、従業員のスキルや経験、能力などがすでに見える化されています。
こうした情報をもとに、定義を進めていくとやりやすくなるので参考にしましょう。

特に、各職務で活躍している方は、ロールモデルになり得ます。
活躍されている方の情報も参考にしてみると、よりキャリアパスのイメージが持ちやすくなるかもしれません。

タレントマネジメントを活用したキャリアパスの示し方③

職務に必要なスキルや経験、能力の定義ができたら、次は、レベルを定めましょう。
スキルや経験、能力が定義されていても、何をもってできているとするか、優秀とするか、良しとするか、人によって感覚がバラバラなことがあります。
こうなると、キャリアパスの明確さが失われ、メリットを享受できなくなるので、誰が見ても判断できるようなレベルを定めることが大事になります。

タレントマネジメントに取り組んでいると、実はこのレベルの定義についても、明確にされています。
従業員情報の見える化を行うにあたり、必要な軸になるからです。

キャリアパスとタレントマネジメントを連動させ、より説得力を持たせるためにも、ここで定めるレベルの定義は、タレントマネジメントと合わせた方がよいでしょう。

うまく連動すれば、各従業員が、現在どのキャリアパスを歩んでいて、どの段階にいるか、というのが、常に可視化されている状態になるので、企業が従業員のキャリアをサポートしやすくなります。

タレントマネジメントにおけるスキルの見える化とは?」には、上記でご紹介した3つの示し方を進めていくヒントが紹介されています。
職務の定義や、スキルの見える化、レベルの定義などを1からされる際は、是非参考にしてみてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は企業がキャリアパスを示すことによるメリットに触れながら、タレントマネジメントを活用したキャリアパスの示し方についてご紹介いたしました。キャリアパスを効果的に運用していくためにも、タレントマネジメントを導入している企業、導入に悩まれている企業は、ぜひ連動性を意識した活用を視野に入れてみてください。

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