企業の人材育成でよく使われる手法、研修ですが、研修企画の作り方については意外と知られていません。研修企画が効果的でないと、研修会社に依頼して実施してもらった研修が想定していたものと違ったり、どんなにいい研修を実施しても不満の声があがってきたりしてしまいます。今回は、ネットで見かける企画書の作り方やテンプレートではなく、「経営陣や現場の要望を、どう形にしていくか」という、実際に研修を作る前段階の研修企画の作り方についてお伝えします。
目次
企業が人材育成でよく使う手法、「研修」とは?
効果的な研修企画を考えていくにあたり、まずは研修について説明します。
人材育成の手法には、大きく分けて OJT、Off-JT、自己啓発(SD)の 3 種類がありますが、「研修」はOff-JT に分類されます。
研修には様々なタイプがあります。
座学
講師が講義で受講者に知識を伝えるという、いわゆる講義形式のタイプ。
受講者が新しい知識や情報を知るための研修でよく使われる。
・座談会(対話)
他者との意見交換を通して気づきを得るという、いわゆる座談会形式のタイプ。
受講者が自分たちの知見からノウハウを見出したり他者の考えや意見を受け止めたりするための研修でよく使われる。
ワーク/演習
テーマやお題に沿って受講者が手を動かす、知識をアウトプットするというタイプ。
受講者が得たもの、持っているものを実践できるようになるための研修でよく使われる。
テーマやお題は、業務に全く関係ないものからほぼ業務と同じ内容のものまで、様々。
原則、実務とは切り離し研修の中だけで完結する。
座学と併用して使われることが多い。
体験型
ワーク/演習と同じく、受講者がテーマやお題に沿って手を動かす、アクティビティを行うタイプの研修。
アクティビティを通して気づきを得たり、新しい知識や情報を知ったりするための研修でよく使われる。
ワーク/演習と似ているが、体験型は知るため、気づくため等インプット色が強い。
例)競技式雪合戦やカーリングなどのスポーツを通してチームでの仕事の進め方やリーダーシップ・フォロワーシップを学ぶ。
最近のトレンド)通常の業務とは別に、異業種の企業と何か新しい取り組みや事業を行うという体験を通して、プロジェクトマネジメントやビジネスを学ぶ。
このように、研修には様々なタイプがあり、それぞれの特徴を理解したうえで企画を考えていくことが大事になります。
企業の人材育成における研修企画の作り方
ここからは、実際に研修を作る前段階の、研修企画の作り方5ステップを紹介します。
研修企画がしっかりしていれば、研修会社からの支援も適切なものを受けやすくなり、また、社内にいる講師の方も研修を作りやすくなります。
ぜひ参考にしてください。
ステップ①:トラブルの発生/課題の認識
多くの場合、企業が人材育成を行わなければ、と感じるときには、トラブルが発生するか、課題が明るみになるかというきっかけがあります。
トラブル、課題というと、ネガティブに聞こえますが、
「将来の事業計画を見越して、社員にはこういうことができるようになってほしい。」
「事業は順調だから新卒採用しよう。新人をきちんと育てたい。」
というポジティブなケースも、理想と現状の GAP という意味で課題がある、と今回は考えます。
人材育成担当者がこうしたトラブル・課題を認識するには、経営陣、あるいは現場からの、声や要望という形で入ってくることが多いので、アンテナ高く、収集・整理しましょう。
ステップ②:現状の把握
ステップ①でトラブル・課題を認識したら、次は実態がどうなっているか、現状把握に努めましょう。
トラブル・課題認識のきっかけは誰かの声であることが多いため、情報が正しい、実態通り、とは限りません。
上はこういうけど、現場では違う、なんて話はよく耳にします。
なので、トラブル・課題を認識したら、関係各所へのヒアリングなどで、現状の把握を行いましょう。
最初は現場が多忙でなかなか協力を得られず、関係各所との調整が大変かもしれませんが、人材育成が企業の実態に沿っているか、離れているかはここで決まるので、ぜひ力を入れていただきたいステップになります。
ステップ③:目的を定める
ステップ②で現状把握が出来たら、次は目的を定めます。
ここで言う目的とは、トラブル・課題が解決できる状態、理想の状態を指します。
適切な目的が定められると、何のための研修か、なぜ取り組んでいるのかが明確になるため、賛同を得やすくなります。
また、この後のステップは目的に基づいて検討を進めていくので、ステップ③は研修企画の屋台骨とも言えます。
ステップ④:目標を設定する
ステップ③で目的を定めたら、今度は目的にたどり着くためのステップ、すなわち、目標を考えます。
一足飛びに目的へたどり着くのはとても困難なので、できる限り細かく、達成できる難易度で、階段のようにステップを設定しましょう。
例)目的:女性にモテるためにムキムキマッチョな体になる
⇒一朝一夕、一足飛びにムキムキマッチョになるのは、ほぼ不可能なのでステップ(目標)を考える。
目標1:まずは基礎体力と毎日の運動習慣をつけるために 1 日 3 キロ走る
目標2:いきなり重いダンベルは持てないから週に 3 回、腕立て伏せを 25 回×3 セットする…等など
このように、目的(理想の状態)であるムキムキマッチョになるまでの一歩一歩を目標とし、設定していきます。
余談ですが、ムキムキマッチョになれば本当に女性にモテるかどうかは不明なので、これは不適切な目的になります(笑)
きちんと課題を解決できる目的を定め、ステップを設定しましょう。
ステップ⑤:目標のうち、研修で実現できるものを選ぶ
最後に、目的、目標を研修企画に落とし込むために、「目標のうち研修で実現できるものを選ぶ」というステップを踏みましょう。
ステップ④でたくさん出した目標の中には、研修で行うと効果的なものもあれば、研修ではない手法で行ったほうが良いものもあると思います。
研修で行うと効果的なものを重点的に、実施すべき研修として、企画に盛り込みましょう。
研修企画に、ステップ①~④の情報があれば、本質的で効果のある研修の企画として、説得力を持ちます。
研修会社への依頼や相談も行いやすくなりますし、講師も研修を考えやすくなるのです。
企業の人材育成における研修企画の効果的なポイント
最後に研修企画を効果的にするためのポイントをお伝えします。
それは、「『ステップ⑤:目標のうち、研修で実現できるものを選ぶ』際に、学びの段階を明確にすること」です。
設定した目標が学びの段階に当てはまると、研修で実現できるもの、といいやすくなります。
まずは4つの学びの段階をご紹介します。
① 聞く(受け止める)
まずは話を聞く段階。新しい情報や知識を、あるいは意見や考えを聞く。
② 知る(理解する)
新しい情報や知識、あるいは意見や考えを聞くだけではなく、理解する。
③ できる
新しい情報や知識、あるいは意見や考えを行動に反映し、正しく行える。(アウトプットできる)
④ 見出す
物事や事象、人と関わりから新しい情報や知識、あるいは意見や考えを見つける。
また、目的にたどり着くために設定した目標のうち、研修で実現できるものが、どの学びの段階に当てはまるか考えると、冒頭でお話しした研修の種類が選びやすくなります。
例えば、“知る(理解する)”に当てはまる目標だった場合、受講者が新しい知識や情報を知るための研修でよく使われる「座学」という研修スタイルを選ぶといいかもしれません。
“できる”に当てはまる目標の場合は、繰り返し練習することが大事になりますので、「ワーク/演習」という研修スタイルがいいと思います。
このように、学びの段階を意識してステップ⑤に取り組むことで、本質的に研修の種類まで選べるようになるのです。
まとめ
研修を企画する際、経営陣や現場の要望を受けて、「なんかいい研修ないかな~」と雰囲気で選んでしまうケースがあったかもしれません。
雰囲気で選ぶと、どうしても物珍しさや面白さが先行してしまい、「楽しかったが効果はない」で終わったり、結局人が育たず何も解決しなかったりしてしまいがちです。
ぜひ、研修を企画する際は、作り方の 5 ステップと、効果的なポイントをおさえた上で企画を行い、経営陣や現場から頼りにされる人材育成を目指してみてください。
ファインドゲートでは社内の人材育成強化を検討する際に、考慮すべきポイントをまとめた入門資料「人材育成の目的の大切さに気づくためのガイドブック」~人材育成担当の気づきのヒントがここにある~ をご用意しました。本資料は、人材育成を強化したい方には必見の資料です。ぜひダウンロードいただき、ご覧ください。